広報紙配布も自治会経由。支所に行けばもらえるが、自治会に入らないと不便が多そうだ。自ら断る人はともかく、入りたくても入れない人もいるのだろうか。

「移住場所にもよります。人里離れた地だと、地域コミュニティーが周囲にない。1軒だけ離れていると、自治会も受け入れようがない場合があります」(市地域課)

 北杜市は東京都内から車で2時間足らずで、名水の里として知られる。8町村の合併で誕生し、面積は約602平方キロメートルと、東京23区並み。一方で、人口は23区の約920万人に対し、わずか5万人弱だ。

 市は移住希望者に対し、地域コミュニティーに加入できる場所を勧めている。人里離れた地に住みたい人には、防災無線が届かないことなどを伝え、それを理解したうえで住むかを尋ねている。市地域課は「ぜひ事前にご相談ください」。

 移住者も受け入れる集落の側も不安な思いは同じ。わずかなすれ違いで両者は水と油になり、場合によっては“村八分”が起きる。移住ブームを失速させないためにも、行政が両者の溝になる要因を洗い出すことは欠かせない。(本誌・上田耕司)

週刊朝日 2017年12月22日号

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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