安藤:人間も年とったら手を入れていかないかんでしょう。運動するという手の入れ方もあるし、知的レベルを上げていくという方法もあるし。知的体力と肉体的体力をメンテナンスせないかん。それがなかったら、おもしろい人生が送れません。女性は90過ぎまで生きるでしょう。20代、30代、40代でメンテナンスの練習しておかないと。

林:先生は世界中飛び回って、月の半分は飛行機に乗ってなきゃいけない状態なんじゃないですか。

安藤:いやいや、私一人でやってるわけじゃないですからね。25人の所員がバラバラにやってますから、私一人がバンバン行っとるわけじゃないんですよ。私は外国が嫌いで、できるだけ行かないんです。仕事を頼まれたときに、自分が見たい建築とか見たい美術館があるところに限って行っとるんです。

林:私と同い年の隈研吾さん(建築家)なんかは、ほとんど飛行機の中で寝てると言ってましたよ。

安藤:隈さんは才能もあるし、知的レベルも高いし、私よりだいぶ若いから体力もあるけど、私はそんなに移動してませんよ。隈さんなんかとはエネルギーの量が違う。あれだけやってたら大変や思うわ。

林:日本ってすごいですね。世界に誇る安藤先生がいて、その後にも世界的に活躍中の次の世代が控えているわけでしょう?

安藤:隈さん、坂(茂)さん、妹島(和世)さん……。いっぱいいますよね。

林:アメリカはあんまりいないんですか。

安藤:アメリカはあんまりいないです。誰でもできるから、コンピューターになってからは出てこなくなりましたね。ヨーロッパも少なくなりましたよ。日本は多いですね。建築をつくるということにおいて、日本人は才能があるんじゃないですかね。文化レベルが高いのは、春夏秋冬があって、感性を磨いてきたからじゃないですかね。建築も感性を磨きながらやってるんだと思いますよ。

林:それで安藤先生のところにも、世界中から注文が殺到するわけですね。

安藤:たくさん来ます。

(構成/本誌・直木詩帆)

週刊朝日  2017年12月22日号より抜粋