鈴木おさむ/放送作家。1972年生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。多数の人気バラエティーの構成を手掛けるほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍鈴木おさむ/放送作家。1972年生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。多数の人気バラエティーの構成を手掛けるほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍
ドラマ主題歌で大ヒットした「恋」と振り付けの「恋ダンス」を披露する星野源 (c)朝日新聞社ドラマ主題歌で大ヒットした「恋」と振り付けの「恋ダンス」を披露する星野源 (c)朝日新聞社
 放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「ドラマ主題歌」について。

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 年末が近づくと各テレビ局、大型歌番組が放送される。CDが売れなくなり、ドラマの主題歌も前ほど売れなくなった。歌というものがテレビを通して露出が減っている中、なんだかんだ言ってドラマの主題歌に起用されることはこの時代の中で、ヒット曲になるチャンスだと思う。

 ドラマ「逃げ恥」の主題歌の「恋」のように、振り付けを真似することで曲がドラマを引っ張っていくこともあった。

 あれはやはり、曲がドラマの中で大きな存在感があったからだと思う。

 主題歌が決まるには、出演する俳優さんのプロダクションの事情などもあるだろうし、それを否定するつもりはない。それで起用され、ヒットしていった曲もあるからだ。

 現在のドラマにおいての主題歌の使い方はエンディングなどで使われることが多い。主題歌だからなんとなく流すという形。あれじゃあヒットしないと思う。

 大ヒットしたCHAGE&ASKAの「SAY YES」はドラマ「101回目のプロポーズ」の主題歌であった。数年前にあのドラマを見返したのだが、毎回2回はかかっていた。オープニングとエンディングのいい盛り上がりのところで2回目がかかる。最終回にはなんと全部で3回かかっていたのだ。あれを見て思った。「そりゃ売れるわ」と。国民の脳裏に焼き付くわと。

 だが大事なのは、その曲がちゃんとドラマのために作られたものであること。ドラマのP(プロデューサー)や演出家も、イメージを伝えてアーティストがそれに合わせて作っているのがわかる。

「SAY YES」や、ドラマ「素顔のままで」の主題歌・米米CLUBの「君がいるだけで」、ドラマ「Age,35~恋しくて」の主題歌・シャ乱Qの「いいわけ」なんかは、イントロからして、相当ドラマの作り手とアーティスト側が打ち合わせを重ねてできたのだなと思う。だからこそ、ドラマ側もいいところで使いたいと思う。

 
 だけど、主題歌になるというのに、それまで自分の作ってきたストックから出したり、ドラマに全然合ってない主題歌を見かけることも少なくない。あんなの見ていて不思議で仕方ない。アーティスト側も「本気で大ヒット目指してやる」とか思わないのかと。

 ヒット曲が少なくなってきた中で、やはりドラマ主題歌というのは、この時代においてのヒット曲の最後のライフラインだと思う。

 ドラマ「逃げ恥」の「恋」以降、二匹目のどじょうを狙おうと、振り付け込みの主題歌もあったりするが、僕は全然悪いことと思わない。まだ、しがみついてでもヒットを出そうと思っているからだ。

 今、歌は「聴くもの」から「見るもの」に更になっていると思う。大阪の登美丘高校が荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」をバブルダンスで復活させたように、音楽は聴くだけでなく、見て真似して共感したり驚愕させないと、ダメなのだ。だからこそ、毎週ドラマとともに流れるドラマ主題歌に対して、今一度本気になってもいいのではないかと思ったりする。

週刊朝日  2017年12月15日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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