実際に、福島第一原発に設置されたマークI型原子炉が安全性の低いものだったことは知られている。

 GEの元エンジニアとして原子炉の設計に関わったデール・ブライデンボー氏は、安全性に疑念を抱いて76年に同僚2人とともにGEを退職し、運転停止を訴えている。

 今回、提訴した原告は、福島県内の2人の医師と四つの病院、それに中小企業やその経営者たち。

 いずれも福島原発事故の被災者で、事故による影響から営業損害を受けたり、休業や倒産などに追い込まれたとしている。原告の一人は怒りの表情でこう話す。

「6年前の福島原発事故で町の人口が減り、仕事に大きな支障が出ました。東京電力だけでなく、不良品の原子炉を造ったメーカーの責任を追及していきたい気持ちは当然あります。そのために提訴したのです」

 原発メーカーを相手取った集団訴訟はすでに日本でも提訴され、進行中だ。

 原発メーカー訴訟原告団で世話人共同代表を務める大久保徹夫氏が説明する。

「私たちは2014年1月に日立、東芝、GEを提訴しました。原子力損害賠償法は電力会社に責任を集中させていますが、電力会社と同様にメーカーも責任を追及されるべきと考えます。現在の原告数は35カ国から約3700人。東京高裁で控訴審を係争中です」

 この裁判とは原告が違うとはいえ、今回、あえて米国で集団訴訟を提訴したのはなぜなのか。米国の集団訴訟に詳しいライアン・ゴールドスティン弁護士は、「日本と米国の集団訴訟で仕組みが大きく違うから」と解説する。

「米国のクラスアクション(集団訴訟)は、事件や事故で多数の人たちが同じような被害に遭っている場合、被害者の一部が全体を代表して訴訟を起こすことができます。被害者は『訴訟に参加しない』という意思を表示しない限りは自動的に加わるため、当事者が桁違いに増える。判決や和解内容は裁判に加わったすべての人々に適用されるため、被告が負ければ膨大な損害賠償が科せられます」

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