「工夫すれば、できんことはないはず。確かに村民が何度も一堂に集まるのは大変だが、たとえば村議会が定足数に達するまで、村民総会で村議の候補者を推薦できるような制度をつくることはできないか」

 前出の榎沢准教授も次のように語る。

「地方自治法での総会の規定が大ざっぱなのは決して不親切だからではなく、自分たちの町にふさわしい条例を住民自身につくってほしいということ。日本国憲法が定める地方自治は、国と地方は対等という趣旨です。狭い八丈小島では全員が一堂に会す形をとりましたが、山間部の大川村では、集落ごとにミニ総会を開いて最後の議決だけ全員が集まるような『段階的村民総会』にしてもいい。制度上は実現可能です。もっとも大事なのは、住民の意識です」

 国から与えられる統一規格を待つばかりでなく、住民自身がその地に合った制度をつくっていくのが真の地方自治、ということか。

 大川村の騒動は、決して対岸の火事ではない。民間研究機関「日本創成会議」は、2040年までに全国1799の市区町村のうち896カ所で20~39歳の若年女性が半減し、社会保障の維持や雇用の確保が困難になる「消滅可能性都市」になると試算している。そのとき、問題に対処すべき議会までもが消滅している可能性がある。

 住む地域を自分たちでどのように治めていくのか。見つめ直すときが来ている。(本誌・小泉耕平)

週刊朝日  2017年12月1日号