北原みのり「座間市の事件、闇は深い」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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北原みのり「座間市の事件、闇は深い」

連載「ニッポン スッポンポンNEO」

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北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

座間市で起きた9人殺害事件について筆をとる(※写真はイメージ)

座間市で起きた9人殺害事件について筆をとる(※写真はイメージ)

 週刊誌の情報によれば、男は女性の面倒見の良い、稼ぎの多いスカウトだったという。風俗店経営者にスカウトの話を聞いたことがある。風俗へのスカウトは違法とされてはいるが、スカウトが連れてくる女性の方が自ら応募してくる女性より「売り物になる」と教えてくれた。その方が美しく、御しやすいから、と。さらに入店後の女性のケアもスカウトがするので女性も長続きする。街で女性に声をかけ店に引き渡すのが仕事ではなく、むしろ、女性の話を親身に聞き「味方」であるように振る舞うのがスカウトの仕事だ。店はスカウトに、女性の売り上げの何パーセントかを支払い続けるか、または入店時に買い取る。買い取り料は、風俗だと平均8万円と言っていた。「買い取る」という言葉にギョッとしつつ、それが、男と男の間で取引される「女」という存在なのだ。彼はなぜスカウトを始めたのか。彼にはどんな世界が見えていたのか。

 既に、この事件を男一人で行った猟奇的快楽殺人のように語りはじめている人も多いが、解せないことはあまりにも多い。事件が発覚した直後、近所の女性が「男性2人が重たいクーラーボックスを持っていた」と証言していたが、あの証言はどこにいってしまったのか。彼は逮捕時にずっと顔を隠し続けていた。顔を隠す手には怪我の痕もなく綺麗だったことが目にやきついているが、逮捕時に顔を隠す社会性と、遺体を切り刻み家に止めておく猟奇性はどのように両立するのだろう。2カ月に9人。まるで仕事するように殺し続ける彼の背後にあった世界を、私は知りたい。

 今後、警察の捜査が明らかにしていくことは多いだろう。その時、私たちは本当に恐ろしい闇を見つめることになるかもしれない。社会の無意識は、この事件を本当には知りたくないと思っているのかもしれない。

週刊朝日 2017年12月1日号


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北原みのり

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