息子さんとパリにお住まいの辻仁成さん。作家、ミュージシャン、映画監督などとして幅広く活動し、最近では自身初の料理小説『エッグマン』を上梓したばかりの辻さんが、作家・林真理子さんとの対談でフランス人の恋愛観を語ってくれました。
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辻:日本に帰ってくるたびに、ニュースの視点が違うなと思うんです。外国で見ている世界と、日本で発信されている世界のニュースの見方がぜんぜん違う。「特派員はちゃんとニュースを送っているの?」と。
林:そうですか……。
辻:しかし、なんとか日本の素晴らしさを世界に届けたいし、日本の再生を願っています。そういえば、日本は不倫の報道がすごいじゃないですか。渡辺淳一先生の『エ・アロール』という本を思い出したんです。
林:ああ、『エ・アロール』を。
辻:「エ・アロール」は「それがどうしたの?」という意味で、ミッテラン大統領が有名にした言葉です。ミッテランに愛人がいることがスクープされて、記者団に囲まれて「愛人がいるんですね」と言われたときに「エ・アロール?」と言ったんです。「だから何なの。個人の問題でしょう」って。それがフランス人の不倫に対する考え方なんですよ。
林:昔、宇野宗佑さん(元首相)が愛人にしていた神楽坂の芸者さんが、月々渡すお手当があまりにも少額だったと週刊誌にしゃべるわ、金はふんだくるわで、「この女の人、よくない」と私が言ったら、フェミニストの人に怒られました(笑)。
辻:そうでしたか。もう一つ、よくわからないのは、日本は男の人はたたかれないで、女の人ばっかりたたかれているじゃないですか。あれは何だろうと思って。
林:そうなんです。もっと言ってくださいよ。
辻:ベッキーが可哀想でした。ああいう戦略もあるのか、と(笑)。
林:ぜんぜん話が変わりますけど、「オールナイトニッポン」の歴史を見てたら、辻さんはパーソナリティーをなさってたんですね。
辻:そう。僕、やってたんですよ。
林:そのときはミュージシャン?
辻:そうです。「オールナイトニッポン」をやめた次の日に、すばる文学賞をもらったんです。
林:ちょっと、カッコよすぎる。
辻:僕、そのあと「パックインミュージック」もやってるんですよ。