二十歳で小宮某と結婚して別れ、小説家宇田川文海(うだがわぶんかい)に師事して手ごめにされたあたりから男性遍歴が盛んとなり、新聞記者毛利柴庵(もうりさいあん)の愛人となり、ゴチャゴチャともめました。柴庵の友人清滝智龍に身の上を相談するうちに、智龍と情交を結んでしまった。

 人妻から身の上相談された男は、そのままフリン関係になりますから、覚悟のうえでして下さいね。男性遍歴をかさねた二十六歳の須賀子に身の上相談をされた二十歳のウブな寒村がひとめぼれしてしまった。

 須賀子は気が強い性格で、夫の寒村が入獄しているとき、カンパを持ってきた同志に「見舞いのお金より復讐を!」と一席ぶちあげたほどです。そういった一途な気性に秋水がひかれてしまったわけで、須賀子を性欲依存症と呼ぶ同志もいました。下半身には別の人格がありまして、困ったもんですが、須賀子にすれば「一年半の男ヒデリ」に耐えきれず、秋水との肉欲に溺れた。

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