「ジャパネットたかた」(長崎県佐世保市)創業者の髙田明社長(c)朝日新聞社
「ジャパネットたかた」(長崎県佐世保市)創業者の髙田明社長(c)朝日新聞社
J1昇格を決め、ゴール裏のサポーターと記念撮影するV・ファーレン長崎の選手ら (c)朝日新聞社
J1昇格を決め、ゴール裏のサポーターと記念撮影するV・ファーレン長崎の選手ら (c)朝日新聞社

 サッカーJ2で昨季下位に低迷し、開幕前は経営難でクラブ消滅の危機まで表面化していたV・ファーレン長崎が、初のJ1昇格を決めた。新社長を迎えてから“奇跡の急上昇”。テレビショッピングのカリスマといわれた地元出身の新社長は、いったいどんな“マジック”を使ったのか──。

【J1昇格を決め、記念撮影するV・ファーレン長崎の選手ら】

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 大詰めを迎えたJ2は湘南ベルマーレが優勝と来季のJ1昇格を決めていたが、残る一つのJ1自動昇格枠(2位以内)をめぐる争いが熾烈を極めていた。昨季J2で22チーム中15位だったV・ファーレン長崎は名古屋グランパス、アビスパ福岡というJ1降格組と激しく競り合い、11日に初昇格を決めた。

 今季開幕前の長崎は、およそ3億円の累積赤字が発覚するなど経営危機が表面化し、リーグ戦の参加どころかクラブ消滅の危機に瀕していた。暗い話題はチームにも波及し、序盤は7節から9節にかけて3連敗があるなど、昇格争いに加わると予想する者などは皆無だった。ところが、4月下旬にクラブ立て直しの切り札として地元企業の「ジャパネットたかた」(長崎県佐世保市)創業者の高田明氏(69)が社長に就任すると、5月にはジャパネットホールディングス(HD)がクラブの株式を100%取得し、チームを取り巻く雰囲気は一変。その後は右肩上がりで成績を上げてきた。

 高い声と独特の語り口でテレビショッピングで人気を博し、ジャパネットを一代で通販大手へとのし上げた高田氏は、社長に就任した経緯をこう振り返る。

「ジャパネットは2009年からスポンサーとしてV・ファーレンを応援させてもらってきましたが、経営危機でなくなってしまうなんて、世知辛いじゃないですか。長崎県民の夢を潰したくないという想いもありましたし、私も長崎出身(平戸市)で、地元愛というんですかね。私自身はジャパネットを離れて3年近くになりますが、私の息子でもある高田旭人社長(現ジャパネットHD代表取締役)からの強い要望もあり、それならばと引き受けたわけです」

 シーズン前の大方の予想を覆す長崎の躍進について高田氏は「神様が降臨したんですかね」と笑うが、突然の社長就任にも「クラブ経営も企業経営と一緒」と立て直しに自信を見せる。

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