田辺:伊丹十三さんが「お葬式」を撮ったのが50歳のころなんですね。一度お若いときにも撮ってるんですけど、50歳ぐらいじゃないと撮れない映画を、伊丹さんはご自分も役者をやりながら熟成させて撮ったと思うので、50歳で映画をつくることにすごく興味があるんです。

林:「お葬式」はすごい低予算だったので、湯河原のご自分の別荘で撮ったり、知り合いの俳優さんにも出てもらったりしたみたいですね。だからできないことはない……。

田辺:そうですね。今、機材とかもけっこう安く借りられて、昔みたいにフィルムじゃないので。

林:映画づくりって、脚本からやると2年ぐらいかかるんでしょう?

田辺:そうですね。

林:麻薬みたいで、一回つくるとやめられないみたいですね。

田辺:楽しいんですよね。どこからどう見ても自分の好みの世界だし。

林:田辺さんが若いときにいちばんやりたかったことは何ですか。

田辺:映像が好きだったので、18歳から自主制作をやって、制作会社に入りたいなと思ってたんです。ミュージックビデオやコマーシャルが映像の最先端なので、そういうのをやりたいなと思ってましたね。(構成 本誌・直木詩帆)

週刊朝日 2017年11月17日号より抜粋