「銀行側は『再延期』と言っていますが、事実上なくなったと見ています。それはともかく、なぜ、これが地銀再編の動きを遅らせるのかというと、合併の選択肢が減ってしまうからです」

 津田氏は今回の「再延期」がなければ、ほかでも県内の1位と2位の組み合わせによる経営統合が出てくると見ていた。貸し出しシェア7割でもOKとなると、ほかの県でも「それなら我々も」と考えてもおかしくないからだ。

「実は、三重と新潟の県内統合は、十八銀とふくおかFGの動きを見てなされたといってもいい。ほかの地銀は、この二つの合併の行方を注目していました」

 しかし、公取委の判断は分かれた。どちらも県内の貸し出しシェアは5割程度とされるのに、三重の統合は認められたが、新潟は審査が長引いた結果、両行は10月27日に来年4月の統合時期を半年間延期すると発表した。さらに11月1日、公取委の杉本和行委員長は記者団との懇談で、同一県内の地銀統合を問題視する発言を行った。

「ほかの地銀は、どのあたりが判断の分かれ目になるのかがわかりにくいため、動くのが難しくなるでしょう。長崎・新潟と三重の違いは、三重が『2・3位連合』である点です。一連の動きは、公取委の『1・2位連合は認めない』というサインなのかもしれません」

 なるほど、だからこそ、地銀の動きが止まっている間に、信金再編が進む可能性があるわけだ。

 いま、全国には信金が264ある。信用金庫の中央機関、信金中央金庫(信金中金)によると、2017年3月末で全体の預金量は約137兆9千億円、貸出金残高は約69兆1千億円。ともに前年より増えているが、集めた預金のうち貸し出し(融資)に回せた割合を示す「預貸率」は50.1%と低い。残りは自分で運用する必要があるが、日本銀行のマイナス金利政策もあって運用は難しくなっている。

 貸出金利の低下で、収益の柱であるはずの「利ざや」も縮小している。地方では人口減少の影響が大きく、経済も停滞気味で、貸し出しを増やそうにも借りてくれる企業が減っている。こうしたことは、地銀が再編を迫られている事情とまったく同じだ。津田氏が続ける。

「地銀と同様に信金業界が今のままの数と姿を維持できるはずがなく、264信金は3分の1程度に再編されていくでしょう。信金が地銀と違うのは、今までも各地で合併を繰り返してきた点です。それら過去の合併を見ると、信金合併の基本公式が浮かび上がってきます。地域密着が基本ですから『同一県内』『近隣』が一番可能性があります。合併の多くは、大が小をのみ込む吸収型です。加えて歴史を見ておくことが欠かせません。過去にどれだけ再編が行われてきたか、です」

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