北原みのり「高速道路の暴力と差別」

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北原みのり

2017/11/09 16:00

 路上の空気、というのがあるのだ。普段の社会生活では心に収める程度のいらつきを、ハンドルを握ったとたん我慢できずに表現したがる人は路上に少なくない。お互いさまの場面でも、クラクションを鳴らしたりパッシングしたり、通り越しざまに横顔ガン見する人たち。しかも路上は完全にあからさまな階級社会でもある。住んでいる地域や車種からみえる経済状態、すれ違う他人に、そんなふうに情報があからさまになる場は、なかなか他にない。威嚇する側も、相手の車を全く見ないではやらないことを、誰もが気がついている。暴力と差別は路上で簡単に放たれる。

 高速で両親が亡くなったのは、追い越し車線での停車中だった。直接の原因はトラックの追突だ。そのため当初、神奈川県警は過失運転致死傷容疑で逮捕していた。それが、メディアによって大きく報道され世論が高まったこともあったためか、横浜地検は男を危険運転致死傷罪で起訴した。上限が懲役7年の過失運転致死傷に比べ、20年と重い罪だ。遺族は歓迎しているという。

 今後、司法がどのような判断を下していくのかはわからないが、この事件を最後まで見届けたいと思う。なぜなら私は、あの夜、もしかしたら「よくあること」として、チラ見した後もただアクセルを踏み続けていた通り過ぎるドライバーであった可能性があるから。自分自身が、“そういうこと”に鈍くなっていたから。他人の命を危険にさらしても誇示せずにはいられない力の正体を考えながら、そんな空気に慣れないための力について考えたい。

週刊朝日 2017年11月17日号

北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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