自衛隊はすでに国民がその存在を認めている。なのに、わざわざ憲法にその存在が書き込まれれば、9条の意味ががらりと変わる。彼らの活動範囲は増えていくだろう。

 イラク戦争のとき、国旗をかけたアメリカ軍人の棺桶がずらりと並べられた、痛ましいニュースを何度も観た。あれがこの国でも起こりうるということだ。そうなったとき、というかそうしたのが自分であっても、議員らは、ただ遺憾の意を表するだけだろう。選挙で落選したくらいで、多くの仲間が死んだなんて騒ぐんじゃないよ。

 テレビに一緒に出た、元民進党で現希望の党の衆議院議員は、以前は、安保法案にも反対していた。なのに、安全保障政策を支持と書かれている希望の党の協定書に署名した。その踏み絵を踏むことが、入党できる条件だったから。

 小池人気にあやかれば、今回の自分の選挙が楽になると思ったんでしょ? 途中で小池人気が崩落し、仲間がたくさん落選したと文句をいうのは、みっともなさすぎる。

 議員であるなら、真っ先にあたしたち国民のことを考えるべき。それが議員である条件だ。そのために国民は、あなた方を先生と呼んでやって、その身分や生活を支えているんだし。

 安倍政権を倒したい、その思いはあったとしても、元民進の安保反対だった議員は、なぜ希望にいった?

 そして、なぜ立憲民主党に対立候補を立てた? あなた方が議員として、これまで訴えてきたことはなんだったのか?

 少なくともあたしは、裏切られた気分でいる。彼らのこれからを、注視したい。

週刊朝日 2017年11月17日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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