ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は「八重歯」を取り上げる。
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海外(イギリス)にいた時、何にいちばん驚いたって、八重歯が縁起の悪いものとして扱われていることでした。「私のチャームポイントは、この八重歯です!」などと見せつけるなんて言語道断。ドン引きされた挙句に魔女狩りにでも遭いそうな勢いで忌み嫌われていたりします。
私は特に男性の八重歯が好きです。八重歯には無邪気でやんちゃな少年性があります。なんてことを書くと、まるで私が危ない女装オカマだと思われるかもしれませんが、あくまでも『(生え揃った)男性』の八重歯が好きという意味です。近年、日本でも審美歯科の進歩が著しく、歯並びを整える上で八重歯を抜いてしまう人も少なくありません。もちろん医学的に様々な根拠があってのことでしょうが、ハロウィーンでドラキュラや魔女の格好をしている人たちを見るにつけ、天然の八重歯への愛おしさは募るばかりです。
テレビの世界でも矯正インプラントの波は凄まじいものがあります。映像技術の進歩に伴って『画面に映る』職業上の身だしなみやプロ意識も一気にグローバルスタンダード化する一方で、白く綺麗な歯は現代社会の『富の象徴』『成功の証』といった側面もあるのではないでしょうか。