数少ない、世界に発信できるチャンスが、クロージング作品のドキュメンタリー映画「不都合な真実2:放置された地球」に出演するアル・ゴア元米国副大統領と、トミー・リー・ジョーンズとの2ショットだった。二人はハーバード大学の同窓生でルームメイト、トミー・リー・ジョーンズが「アルは53年にわたる友人」と紹介し、アル・ゴア氏が「私の旧友とここで再会するとは思わなかった」と返し、盛り上がった。ただ、そのやりとりも一瞬だけ。そして、二人揃った記者会見の場は用意されることはなかった。

 もし二人がそろって記者会見を行っていたら、日本のメディアだけでなく、海外メディアの記者たちも紹介したに違いない。奇しくも、トランプ大統領の来日直前のタイミングでもあった。映画祭に脚光を浴びてもらえる大きなチャンスでもあったはずだった。

 1985年に始まった東京国際映画祭は、今年は第30回だった。しかし、後発の韓国の釜山映画祭には今や世界的知名度は劣り、近年では中国の上海国際映画祭や北京国際映画祭にも世界的な存在感で負けている。記者は6年前からほぼ毎年、上海国際映画祭を見ている。レッドカーペットには世界的な俳優や監督が多数訪れ、世界中からメディアが集まっていて華やかだった。開催箇所や会見場など含めた運営規模も大きい。そして何より、映画祭のチケットが発売した瞬間に、注目作品は数分で売り切れと、街全体の盛り上がりを感じた。

 翻って東京国際映画祭。観客からの認知度もイマイチ。メディアからの注目も最後までイマイチだった。次回以降も、世界にほとんど発信されない国際映画祭として続けていくのだろうか。(本誌・大塚淳史)

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