審査委員長を務めたトミー・リー・ジョーンズ。数少ない世界的知名度を誇る参加者だった。右は審査委員を務めたヴィッキー・チャオ(撮影/大塚淳史)
審査委員長を務めたトミー・リー・ジョーンズ。数少ない世界的知名度を誇る参加者だった。右は審査委員を務めたヴィッキー・チャオ(撮影/大塚淳史)
(写真左から)永瀬正敏、マルタン・プロヴォ監督、トミー・リー・ジョーンズ、ヴィッキー・チャオ、レザ・ミルキャリミ監督。(撮影/大塚淳史)
(写真左から)永瀬正敏、マルタン・プロヴォ監督、トミー・リー・ジョーンズ、ヴィッキー・チャオ、レザ・ミルキャリミ監督。(撮影/大塚淳史)
最終日の受賞者会見場は狭く、とても国際映画祭とは思えず。また、中国の有名俳優が受賞したこともあり、中国メディアの記者・カメラマンが訪れていたが、彼らの受賞会見が終わった瞬間、一気に空席が目立った(撮影/大塚淳史)
最終日の受賞者会見場は狭く、とても国際映画祭とは思えず。また、中国の有名俳優が受賞したこともあり、中国メディアの記者・カメラマンが訪れていたが、彼らの受賞会見が終わった瞬間、一気に空席が目立った(撮影/大塚淳史)

 10日間の日程を終えて11月3日、閉幕した東京国際映画祭。第30回という記念の映画祭だったが、国際映画祭で一番のメインイベントである開幕式のレッドカーペットには、蒼井優、宮崎あおい、満島ひかりといった国内の人気俳優こそ登場したものの、世界的なスターは、缶コーヒー「BOSS(ボス)」のCMで“宇宙人ジョーンズ”役としてお馴染み、米国人俳優トミー・リー・ジョーンズくらい。世界的な大都市で行われる国際映画祭というには、開催地の東京ですら認知度はいまいち、最後まで盛り上がりに欠けた。世界に向けて、「東京国際映画祭」をアピールできたのだろうか。

 最終日の11月3日、映画祭の各受賞者が記者会見が開かれた中で、印象的な質疑応答があった。観客賞を受賞した「勝手にふるえてろ」の大九明子(おおくあきこ)監督に、ある記者が「日本の映画人として、東京国際映画祭がどう発展していってほしいですか」と質問した。

 それに対し、大九監督は言葉を選びながら、「実は私もこの映画祭に毎年足を運ぶことなく、どこか距離を置いていたところがあった。生意気なことですが。今回、ゲストパスをいただいて、何作か見させて頂いて、映画祭の空気に触れ、なんてもったいないことをしていたんだろうと思った。ちょうど今アメリカ大統領のお嬢様(イヴァンカ・トランプ氏)が来日されているニュースが溢れていますが、映画祭にはトミー・リー・ジョーンズさんが来ているのに、こちらに目が向かないのは寂しいこと。皆でどうにか気づいてもらう工夫が今後必要じゃないんかなと思いました」と答えた。

 そもそも開催地の東京の人たちに、どれだけ東京国際映画祭が知られていたのだろうか。開催されていたのは六本木周辺のみ。六本木ヒルズに一応大きな看板は張り出されてはいたが。

 東京国際映画祭に残念感を持つ記者は少なからずおり、長年、東京国際映画祭を取材をし、世界で一番有名なカンヌ国際映画祭も取材したことがあるベテラン映画ライターは、「以前は、映画『タイタニック』のワールドプレミアがあり、レオナルド・ディカプリオやジェームズ・キャメロン監督がレッドカーペットに登場するなど、東京国際映画祭が世界的な注目を浴びることもあったんですけどね」と残念がった。

「プレス席も年々狭くなってますし、ライターやメディアからあまり取材して欲しくないのでは」と訝しがる声も。運営体制がコロコロ変わり、ノウハウが引き継がれていないことを指摘する記者もいた。

 今回の東京国際映画祭に参加した著名人を細かく見れば、審査委員として参加した中国人女優ヴィッキー・チャオ、イベントに登壇したスティーブン・ソダバーグ監督、元米国副大統領のアル・ゴア氏と世界的知名度はある程度はあるが、それでも東京国際映画祭全体の盛り上げに一役を買ったかというと微妙なところだろう。

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