──二宮さん演じる佐々木は、料理人としての才能はすごいけれども、周りに心を開かない難しい性格です。佐々木に共感できる点、できない点は?

 何かを得るためには何かを失わなくちゃいけない。自分もそういう世界で生きていますから、そこは共感できます。佐々木は料理をするとスイッチが入るというよりも、ずっとスイッチを入れっぱなしの人間。彼の未熟さをうまく出せればと思いましたが、特別な人間にはしたくなかった。強い意志を持って人や社会に対して壁を作っているわけじゃなくて、すべて受け入れるんだけど、興味がない。最初は飲みに誘われていたんだけど、半年も経つ頃には「どうせあいつは来ないから、もう誘わなくていいよ」と言われちゃうタイプというか。本人の愛情がないんじゃなくて、周りの愛情がなくなっちゃうような。そういう人間なのかなと思いました。その点私は、リアルでもそういう人間なので、ニュートラルにできたなと思っています(笑)。でも、誰にでもある部分なんじゃないですかね。

──佐々木は自分の料理に妥協できずに店を潰してしまいますが、二宮さんが妥協できずに失敗した経験は?

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