冒頭の小平支店の行員が言うように、銀行の顧客は元本割れを嫌う人が多い。このため「安全性」に特に気を配った。最低金額が低いスタンダードコースは、対象資産の市場の値動きに連動するインデックスファンドだけの構成にした。また、他社商品の組み入れ投信を調べて、業界の中でも最もリスクが低くなるような設計をめざした。リスクが低くなる分、リターンも望めなくなるため、可能な限り手数料の削減にも努めた。

「極力人手がかからないようなシステムを開発し、経費削減を進めた結果、直接お客さまが負担する手数料は1%を切ることが実現できました」(田中氏)

 他社が開発したサービスでも、初心者に役立ちそうなものはどんどん採用した。値上がり時に収益を確定する「プロフィットロック」、逆に損失拡大を防ぐ「ロスカット」などだ。

 販売現場でも、顧客の状況を詳しく聞き取ったうえで商品提案するように指導した。顧客が求めれば、ライフプランの相談から始める。今の家計状況をもとに、「キャッシュフロー表」と呼ばれる家計の長期予想表が作れるようにもなっている。コンシューマービジネス部の浦田紘介担当マネージャーが強調する。

「単なる商品提案だけでは、お客さまのことを考えていることになりませんから。2年ほど前から聞き取り運動を始め、このところようやく浸透してきた感じがします」

 8月段階で調べたところ、契約者のうち約5割が投資未経験者だったというから、りそなの「初心者」戦略は今のところ順調といえそうだ。また、資産残高のうち約3割は他の金融機関からの預け替えといい、8カ月で約500億円のニューマネーを集めた。

 目標は2020年度末での「1兆円」。今のペースが続けば達成可能というが、はたして初心者向けの試みは成功するのか。

 先行するトップ4社も、それぞれ特徴あるビジネスを展開している。

 野村証券のバリュー・プログラムも、インデックスファンドのみで構成されている。インデックスファンドのため、顧客が負担するコストが低い。野村は原則3カ月に1回、顧客にファンドラップの運用状況を報告している。運用結果の報告に加えて、要望に応じてポートフォリオの見直しも適宜行う。支店のセミナーも頻繁に行われている。

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