夫:明け方、タクシーで自宅に帰ってきて、家のすぐそばで真横から車にぶつかられたんです。

妻:私が駆けつけると車の中は血の海でした。電柱が曲がるくらいの衝撃で、第二頸椎骨折と診断された。

夫:その13時間後くらいに東日本大震災が起きた。意識がもうろうとしているのに揺れに驚いてベッドから飛び降りようとして、周囲に押さえられたらしいです。

――取材に行くこともできず、1カ月以上の入院とリハビリの日々。復帰できたのは2カ月半後だ。しかし、焦りはなかったという。

夫:「悔しい」とは全然思わなかった。いい機会に恵まれたと思えました。これはもう神様が「休みなさい」と言ってるんだよと。

妻:入院中は毎晩、病院に食事を運んで娘と一緒に過ごしたんです。そんな時間、それまでの22年間、一度もなかった。

夫:僕はあれから本当に人生観が変わりました。一日一日ご褒美をもらっているようで、そのありがたみを感じるようになった。

妻:「生かしてもらった」と感謝しています。もう少しずれていたら下半身不随になっていたかもしれない。

――いまの夫婦の最大の関心事は娘・桃子さんのこと。ミス・ユニバース世界大会に出場する。

夫:11月、現地について行きます。結果はどうあれ、ここまで来たことがすごいことだから。

妻:その後はまた二人でのんびり旅行に行きたいね。(聞き手・中村千晶)

週刊朝日 2017年11月3日号より抜粋