あおむけに寝て膝を立てる。息を吸っておなかを膨らませた後、息を吐きおへそを引っ込める。背中が床から離れないよう注意
あおむけに寝て膝を立てる。息を吸っておなかを膨らませた後、息を吐きおへそを引っ込める。背中が床から離れないよう注意
四つんばいになり、息を吐きながらおへそを内側に引っ込める。
四つんばいになり、息を吐きながらおへそを内側に引っ込める。
腰を安定させたら右手を前に上げる。背中は平らにし、手を上げたときに骨盤が傾かないよう注意
腰を安定させたら右手を前に上げる。背中は平らにし、手を上げたときに骨盤が傾かないよう注意
腰痛症の実態調査:山口県腰痛スタディ(週刊朝日 2017年10月27日号より)
腰痛症の実態調査:山口県腰痛スタディ(週刊朝日 2017年10月27日号より)

 原因不明で「治らない」と諦めていた腰痛。実は正しく診断すれば原因が特定できるケースも多く、コツを押さえれば、簡単な体操で改善できるという。空いた時間に試してみよう。

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 厚生労働省の調査によると、3カ月以上続く慢性腰痛を抱えている人の数は、およそ2800万人。腰痛は最も訴えの多い症状の一つだ。これまでは、腰痛の8割以上は原因がわからない“非特異的腰痛”とされていた。だが、実際は難治性の腰痛は一部。ほとんどは“専門医がていねいに診察すれば、原因が特定できる腰痛”であるという。

 腰痛持ちの人にとって朗報であろうこの実態を明らかにしたのは、山口大学医学部整形外科助教の鈴木秀典さんらだ。

「実は、“腰痛の8割は原因が特定できないもの”というのは、海外の報告によるもの。日々、患者さんを診ていて日本の実態は違うのではないかという印象はずっと持っていました」

 と鈴木さん。この調査は「山口県腰痛スタディ」と呼ばれるもので、2015年4~5月に山口県内の整形外科を受診した腰痛患者323人(男性160人、女性163人、平均年齢55.7歳)を調査。鈴木さんらがつくった診断手順に従って、整形外科の専門医が問診やアンケート調査、身体診察、画像検査(単純X線撮影)を行った後、山口大学附属病院整形外科など別の医療機関がその患者を再診。初めの診断が正しいか二重チェックした。

 その結果、原因が特定できた腰痛は78%。内訳は、多い順に「椎間関節性腰痛」「筋・筋膜性腰痛」「椎間板性腰痛」だった。その一方で、原因がわからない腰痛は22%にすぎなかった。

「上位三つは、筋肉や筋膜、関節などに炎症が起こるタイプの腰痛で、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などのような腰痛とは異なります」(鈴木さん)

 筋肉などの損傷や炎症はX線の検査では見つけにくく、画像だけに頼ると見逃しやすい。そのため、これらの腰痛が非特異的腰痛として扱われていた可能性が高いという。

「今回の調査では、MRI(磁気共鳴断層撮影)のような高度な検査をせずとも、日々の診療で行われている問診や触診、神経学的検査(筆のような道具で皮膚をなでるなど)などをていねいに行えば、きちんと診断をつけられることもわかりました」(同)

 つまり、今まで非特異的腰痛といわれた腰痛のなかには、診断がつくケースがあるかもしれないのだ。

 診断がつけば適切な治療方針が立てられ、有効な治療を受けることができる可能性が高い。例えば、椎間関節性腰痛などの腰痛は、痛みを起こす神経や関節、筋膜に少量の麻酔薬を注入する神経ブロックや、電気の熱で焼く経皮的電気焼灼術が有効な場合が多い。

「本当に難治性の腰痛はほんの一部で、多くは治る腰痛です。原因がわからない腰痛を抱えている人は諦めず、整形外科の専門医に相談してほしいと思います」

 と鈴木さんは助言する。

 ところで、手術や薬物治療などとともに腰痛治療の柱となるのが、運動療法だ。ちまたには実にさまざまな腰痛体操が存在するが、どれもイマイチ……と思っている人もいるかもしれない。その場合、腰痛改善に必要な筋肉とは違う筋肉を鍛えていた可能性がある。

 さらに、腰痛改善のコツは、筋肉に負荷を与えて“鍛える”のではなく、ポイントとなる筋肉を“うまく使う”ことが重要であることが、最近の研究でわかってきた。

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