放送作家でコラムニストの山田美保子氏が楽屋の流行(はや)りモノを紹介する。今回は、芸能人御用達の和菓子屋「桃六」について。
* * *
一口に「楽屋」と言っても、テレビ局や舞台、コンサートホールなど、ジャンルや場所によって流行りモノも異なっている。
これまで何度も紹介してきた芸能人御用達の化粧品や、祝花、楽屋花を得意とする花店、ケータリングや差し入れなども、100%ではないものの異なっているものなのである。
なかでも、舞台関係者が口にするお菓子やお弁当は、歴史があるというだけでなく、殊更、縁起が重要視されているように思う。
先月、「ジャニーズYOU&MEアイランド」(帝国劇場)の“ごしょび”(関係者は、ご招待日のことをこう呼ぶ)。著名な演劇評論家らが幕間に食べていたのが『桃六』のお弁当だった。箸袋には「桃太郎だんご 桃六」と中央区京橋の住所が記されている。
『桃六』は、明治2年創業。歴史のある名店がひしめく京橋にあって、近所の方はもちろん、歌舞伎役者や女優らの顧客を多数もつ、有名な和菓子屋さんだ。
和菓子に使われるお餅は毎朝、臼と杵でつき、お団子や大福、季節の和菓子など、すべて職人さんが手作業で完成させているから、大量販売は無理。人気商品は、お昼前に売り切れてしまう日も少なくないと聞く。