でも、そういう時代も、変わってしまうのかなとも感じています。僕なんかは、絶滅危惧種かもしれない。ずっと、本能と感性で撮影をしているんですけど、周囲が少しずつ頭脳プレーに変わってきている。たとえば、いまのハリウッドの劇場用映画なんかは計算しつくされていて、確かに映画としてはすごく迫力があって興味を惹かれるんですけど、僕らの世代からすると、人間的なものはどうなってしまうのかって思うんです。

 映画も、人間性を失っちゃいけない。ノーベル文学賞をカズオ・イシグロさんが取ったのは、やっぱり彼の書きたいものが人間の神髄だからだと思うし、それを失ったらダメだからなんだと思いますね。

 先ほども言ったけれど、カメラマンって、自分の見て感じていることが、やっぱり画面に出ちゃうんですよ。それこそがドキュメンタリーで、演出された劇場用映画と違うところなんだろうと。は演出できませんしね(笑)。

──猫は思いどおりにならないこともありそうですね。

 思いどおりにならないことのほうが多いですよ(笑)。リサーチしてから海外ロケに行っても、猫に会えないこともけっこうあります。特に野良は大変で、映画にも登場するシチリアのドメニコには3時間くらい会えなかったし、ニューヨークの白猫ホワイトスライスなんて7時間待ちましたから(笑)。

 本当に猫は犬と違うんですよね。犬はある程度言うことを聞いてくれるけど、猫はむしろ、僕たちの望んでいるのと反対のことをしてくれることが多い。でも、それが猫の魅力でもある。毎回新しい発見があるから面白いし、観てくださる方の琴線に触れるシーンになるような気がしますね。僕たちがハッと思わないと、感動につながらない。

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