その後、景気の状況に応じて追加投資する商品を変えていく。景気は通常、4~5年ごとに「春夏秋冬」のように移り変わる。そのサイクルは、米国債の短期(2年物)と長期(10年物)の金利を比べることで判断する。米金利は世界の景気を的確に表す指標だからだ。数値はネットなどで確認できる。今は米国債の2年物は1.51%、10年物は2.33%程度となっている。

 景気が徐々に良くなっていく時期「春」は、短期と長期の金利はともに上昇し、金利差は拡大する。この時期は積極的にリスクを取る。買うのは外国債券と外国株式で、それぞれ追加投資額の50%分を割り当てる。日本株や国内債券などは買わなくていい。

 景気が過熱する「夏」では、短期と長期の金利はともに上昇するが、金利差は縮小。景気回復の最後の局面で大きく上昇しがちな日本株と、代替投資にそれぞれ50%分を割り当てる。代替投資にまわす分は国内不動産、金、VIXで3等分する。17年10月時点は、この「夏」の時期に当てはまるという。

 景気が縮小する「秋」では、短期と長期の金利はともに下落し、金利差は縮小。冬に備えて国内債券と代替投資を50%分ずつ買う。

 景気が後退している「冬」は短期と長期の金利はともに下落し、金利差は拡大。買うのは国内債券と外国債券が50%分ずつ。これまで積み上げてきたVIXを売って利益を確定させることもできる。

 塚口さんは難しく考えず、まずはやってみることが大切だと促す。

「少額でもいいから金融商品を買い続けることで、長期的に資産のバランスが良くなってくる。運用に慣れてくれば、市場の変化に応じて割高な資産を売り、割安なものを買うこともできる。損をしても、投資について考えるチャンスになる。私も失敗を繰り返してきたからこそ、今がある」

 こうした投資法をまとめた著書『世界第3位のヘッジファンドマネージャーに日本の庶民でもできるお金の増やし方を訊いてみた。』(小社刊、税別1300円)もこのほど発売された。

 もちろん投資は「自己責任」が原則で、必ずもうかる手法はない。家計の状況に応じて、無理せずにチャレンジしてほしい。(本誌・多田敏男)

週刊朝日 2017年10月27日号