さるなしの果実とジュースなどの加工品(撮影/片山菜緒子)
さるなしの果実とジュースなどの加工品(撮影/片山菜緒子)

 あまりのおいしさに、猿がすぐに食べてなくなってしまう。そんないわれがある果物「さるなし」。キウイフルーツの近縁種の「こくわ」の実で、猿といわず人間もすぐ食べたくなる味だ。ビタミンCもビタミンB1も豊富な、スーパーフルーツの魅力を紹介しよう。

 さるなしはモスグリーン色で、毛のないキウイを小さくしたような形。口に入れると、皮の厚いブドウみたいな食感だ。鉄分、ビタミンC、亜鉛を多く含む。

 生で食べられる時期はわずか1カ月ほどで、果実そのものを店頭で見かける機会は少ない。ドリンク、ジャム、酢みそなどの加工品が多く出回っていた。

 しかし、最近少しずつ、全国に販売が広がってきた。「ブームが来そうですよ」。産地の福島県玉川村の直売所「こぶしの里」の穂積俊一さんは、期待する。

 各地で開く物産展などでは、30粒入りパック(550円)が1日100個以上売れる。果実以外にも、ジャムなどの加工品、ジャムが入ったロールケーキや、果汁入りのリキュール「さるなしの雫」などがある。「たんぱく質分解酵素を含むので、(ジュースを)焼き肉のたれに混ぜても良いですね」と穂積さん。

 対面販売をしていると、一口食べて「なにこれ~! おいしい」と目を見開く女性もいるそうだ。穂積さんはその都度、「そうでしょ。今しか食べられない幻の果物ですよ」と返す。このやりとりがたまらないという。

 地元では、食材としてうまく活用している。福島県で飲食店を運営する「山際食彩工房」の山際博美代表取締役は言う。

「さるなし入りマヨネーズ、ラー油、(レトルト)カレーなどが出てきました。酸味があり、少量の酢を加えるとマヨネーズができます。加工品のカレーは乾燥したさるなしが入っていて、食感も楽しめます」

 山際さんの店では、ランチの後にさるなしジュースを注文する人もいる。自然な酸味が人気だ。生の果実は9月初旬~10月中旬しか口にできないが、熟したものを冷凍保存しておけば、解凍して一年中味わえる。

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