「あんなにうまいセリフはない、と思いましたね。医療保険が普及したところで、『医療保険で治療費は対応できても生活費はどうするのか』と言うのですから」

 アフラックの徳武氏によると、テレビCMよりも商品名を社内で必死で考えたという。

「新しい種類の保険なので、商品名にはこだわりました。わかりやすさを重視して、誰が聞いても内容がわかるものを目指した結果が『給与サポート』でした。CMでは『医療保険では足りない』という点を強調してほしいと注文をつけました。私どもが医療保険契約件数ナンバーワンの会社であるからこそ、自信をもってそう言えたのでしょう。評判ですか? 社内では『まあまあ』の評価ですね」

 徳武氏は謙遜するが、むしろ利用しているのは同業他社のようだ。説明しても理解しにくい人に、「ほら、テレビでやっているあのCMですよ。あれと同じです」と言うだけで、わかってもらえるからだ。

「販売現場では、アフラックのCMが踏み台にされています」(保険代理店の職員)

 どうやら就業不能保険の人気は、保険に加入する消費者側と供給側の必要がぴったり合ったことから始まったようだ。

 それでは、個人消費の側面からは、この現象はどう見えるのか。消費社会研究家の三浦展氏はこう言う。

「年金がもらえるかどうかわからないから長く働くことに備えなければ、という意識が根本にあるようで、何をするにも早めに準備しようというのが、消費のいろいろな場面で見受けられます。私の調査では、医薬品の消費はどの世代でも伸びているし、今の中年男性は10年前のシニア男性並みにヨーグルトを食べています。健康志向がどんどん前倒しされているわけです。就業不能保険が人気なのも、同じ文脈にあるように思えます。私は『予防的消費』と呼んでいます」

 予防的消費で、現代ニッポンを覆う「将来不安」は解消できるのだろうか。(本誌・首藤由之)

週刊朝日 2017年10月20日号