複数の関係者が指摘するのが社会環境の変化だ。共働きが当たり前になり、どちらの収入が欠けても生活に響く。また、単身世帯が激増し、もはや日本では「子供あり世帯」は少数派だ。ライフネットの岩瀬社長が言う。

「シングルの方は、家族にお金を残す必要がありません。年金が心配で老後不安というのもあるのですが、それ以上に病気になった時のことを心配しているみたいです」

 岩瀬社長によると、かつてライフネットを訪れた30代のキャリアウーマンは、次のように話したという。

「1千万円の死亡保険に入っているけど、自分の生活を考えるといらない保険でした。私が死んでも誰も困りませんから。友達は多いし、『寂しい』と言えば駆けつけてくれるボーイフレンドもいる。でも、もし病気やケガで長期間寝込んでしまったら、どうなるのか……。それがとても心配です」

 人気が出たのは、加入する側に確かな「需要」があったからなのだ。

 働けなくなると家計が火の車になることは、さまざまな調査が示している。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、大半の会社が病気休職制度を整備しているものの、休職期間中に月給を支払う企業はわずか18%。国立社会保障・人口問題研究所が生活保護受給者を対象に調べたところ、生活保護になった理由として25.4%が「世帯主の病気」を挙げた。

 こうした結果を受けているのだろう。いま、生保業界のキーワードは「生きていくための保険」だ。

 一方、生保業界側にも「事情」があった。

 世帯構成の変化や人口減少で、死亡保障に対するニーズがめっきり減ってしまった。貯蓄型商品は日本銀行のマイナス金利政策で商品設計が成り立たなくなり、養老保険などが相次いで販売停止に追い込まれた。いま、貯蓄型で各社が販売に力を入れているのは、外貨建ての商品だ。

 先の保険代理店の職員が、

「近年、競争が激しかった医療保険もほぼ一巡した感じ。要するに売れる商品が少なくなっていたんです」

 と言えば、アフラックの徳武敏マーケティング企画部課長代理も、

「医療保険も死亡保険も2010年ごろにピークアウトし、もはや保険は成長を望めないのではないかとみられていました。各社とも、保険の領域をどう広げていくか必死でした」

 と話す。

 まさに、そこにぴったりと就業不能保険が当てはまったのだ。そして、「次はこれ」の流れを決定づけたのが冒頭のアフラックのCMだった。先の後田氏が珍しくほめる。

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