圧倒的な存在感を示すストーンズのステージ。ミック・ジャガー(左)とキース・リチャーズ
圧倒的な存在感を示すストーンズのステージ。ミック・ジャガー(左)とキース・リチャーズ
ミックは74歳。枯れた味わいも魅力だ
ミックは74歳。枯れた味わいも魅力だ
ステージで自在に動くミック
ステージで自在に動くミック

 ザ・ローリング・ストーンズが名盤『スティッキー・フィンガーズ』の全曲をライヴで再現!なんて話を聞けば、いてもたってもいられない。

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 1971年発表の『スティッキー・フィンガーズ』は、『ベガーズ・バンケット』(68年)、『レット・イット・ブリード』(69年)、『メイン・ストリートのならず者』(72年)と共に、今に至っても絶大な評価を得ている傑作アルバムの一つだ。

 再現公演は2015年5月20日、米ロサンゼルスのハリウッド大通りの中心部に位置するフォンダ・シアターであった。1926年開館の由緒ある劇場だ。当夜の公演の映像作品『スティッキー・フィンガーズ~ライヴ・アット・ザ・フォンダ・シアター2015』がこのほど、発売された。

 数万人が入るスタジアムやアリーナと違い、同シアターの収容人員は1千人程度。ストーンズがツアーの前に小規模会場でウォーム・アップ・ギグをするのは恒例になっている。今回も、北米ツアーを控えてのギグだったが、『スティッキー・フィンガーズ』の全曲再現という特別な趣向で実施された。

 ストーンズのライヴを収録した映像作品は何本もあるが、本作では、小劇場ならではの迫力ある臨場感に圧倒される。それこそ最大の見どころだ。映像だけでなく、音響の素晴らしさも見逃せない。

 幕開けは「スタート・ミー・アップ」。細身のパンツ姿のミック・ジャガーは、股間もっこり、体くねくね。盛んにステージを行き来して観客をあおる。キース・リチャーズはお得意のポージングで余裕しゃくしゃく。ロン・ウッドもソロ・パートでステージ前にせり出し、パンチの利いたワイルドな演奏を披露する。

 いきなりこれを見せられては興奮を覚えずにはいられない。会場を埋めた観客同様、自然と歌を口ずさんでしまうほどだ。

『スティッキー・フィンガーズ』の再現ライヴといっても、当夜はアルバムの曲順通りではなく、他のアルバムの曲も演奏された。本作では「スタート・ミー・アップ」に続く2曲を不自然なく省き、「スウェイ」から再現ライヴが始まる。

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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