津田大介「国外に逃げ場を求めるフェイクニュース」
連載「ウェブの見方 紙の味方」
新法成立を受け、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは9月21日、ドイツの総選挙を前にフェイクニュースの拡散やヘイトの扇動に用いられる数千のフェイクアカウントを凍結したことを明かした。また、ドイツの非営利ファクトチェック機関の「Correctiv」と連携し、真偽の疑わしい記事へのリンクには警告ラベルを貼り付けて注意を促している。このような対策が進む中でドイツ総選挙は実施された。多くの専門家が分析したところ、今回の選挙でフェイクニュースによる影響はほぼ見られなかったそうだ。
一方で気になる分析もある。米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」のデジタル・フォレンジック・リサーチラボによれば、ドイツの極右勢力は「VK」や「OK.ru」といったロシアのソーシャルメディアで盛んに活動しているという。同サービス上に流れる選挙に関連する人気記事のほとんどはAfDを支持する内容だった。フェイスブックやツイッターを追われた極右勢力はドイツ国内法に縛られず、発言や記事の正確さが求められない新天地として、ロシアのソーシャルメディアを選んだ。そこから発信された情報が国境を越え、ドイツで閲覧されたことがAfD躍進の背景にあるのかもしれない。
※週刊朝日 2017年10月13日号
津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)
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