春風亭一之輔「◯◯の秋」に苦言「魅力がアップしたような錯覚を……」

ああ、それ私よく知ってます。

春風亭一之輔

2017/10/08 11:30

 でも、そもそも「○○の春」「○○の夏」「○○の冬」ってあまり言わないな。三者の個性が強過ぎだからか、「お花見の春」や「マリンスポーツの夏」とか「鍋物の冬」って言われても、「そりゃそうだろよ、知ってるよ……」ってかんじだ。

 かといって『秋』は無個性?いやいや。おそらく無自覚であろう凛とした佇まい。暑くなく、寒くもなく、だんだんと涼しさを増してくる頃に吹くほんのり乾いた風。「すごしやすさ」という包容力、プライスレス。抱かれたい・付き合いたい季節・ナンバーワン。

 そんな私も『秋』には毎年、ネタおろしの独演会を行っている。今年は四夜連続、毎日ネタおろしだ。

 私にとっては「ネタおろしの秋」。なぜ『秋』を選んだのか。自分でもわからない。ただこんなハードな独演会は『秋』じゃないと乗り越えられない。

 暑い『夏』、寒い『冬』はムリ! 『春』は年度始めで忙しい! やっぱり『秋』!

 正直、『秋』さんには甘えさせて頂いてます。その胸に抱かれながら、自由にやらせて頂いてます。そのくせ、独演会の時期が近づくと憂うつ。『秋』は憂うつ。もう……イライラする。

 そんな勝手な私の四夜連続独演会、ありがたいことに今年は完売です。来年は五夜になります。皆さん、今のうちに手帳にお書き込みください。

 来年の『秋』を想うと、今から気が重く、鼓動が速くなる。

週刊朝日 2017年10月13日号

春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめた最新エッセイ集『まくらが来りて笛を吹く』が、絶賛発売中

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