もともと、西武のエースとしてだけではなく、日本球界のエースとして、五輪やWBCのマウンドに立ち続けてきた。今や常設化された侍ジャパンだが、真剣勝負の国際大会ではない日米野球だって、平気で完投してきた選手だ。もはや、そんな投手はいない。今では日米野球などの親善試合では、球数への制限がかかり、選手も出場辞退することが増えた。彼は、肩、ひじに張りがあっても、選ばれたら必ずマウンドに立った男だ。その生き様まで傷つけるようなことだけはあってはならない。もちろん、本人もあぐらをかいてはいないだろう。来年駄目なら、もう拾ってくれる球団はなくなる。

 今年は2軍の公式戦すらマウンドに上がることはできなかった。若手がどんどん台頭し、同じ力なら工藤監督だって若い選手を使う。もはや、ソフトバンクでは1軍登板機会はないかもしれない。それでも、野球をやりたいという覚悟を、来年は見ていきたいと考えている。

 ロッテの井口資仁が引退するなど、今年も長く野球界でファンを魅了してきた選手がユニホームを脱ぐ。そして、裏では来季の戦力外の話も進んでいるし、10月に入ると速やかに第1次戦力外通告者が出てくることになる。CS、日本シリーズに出場する優勝チームでも水面下で選手の契約についての話は進んでいる。球団や選手にとって一番しびれる時でもある。

 一方で、早稲田実の清宮幸太郎がプロ志望を表明し、ドラフト会議はかつてない盛り上がりを見せるだろう。球団にとっては彼に重複するのを避けるのか、どうか。それだけではない。一塁手のレギュラーを抱える球団であっても、戦力としてはもちろん、スター性を兼ね備えた選手だけに、戦力の重複を覚悟で指名するのか。清宮もこれだけ注目を集める中で、意中の球団を表明できるのか。いろんな意味で注視していきたい。

週刊朝日 2017年10月13日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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