理由は人手不足による警備費高騰。厚生労働省「2016年賃金構造基本統計調査」によると、警備業で働く人の給与は5年前から約6%上がった。今年の天神祭の警備費は約3900万円で、5年前から1300万円増えた。収支は近年、赤字傾向だ。

 大阪天満宮は、ネット上で寄付を募るクラウドファンディングで、警備費の資金を集めている。今年は目標250万円に対し、270万円を集めた。柳野さんは「今年は何とか黒字になる見込み」と安堵の様子だが、累積赤字が3400万円あるという。「赤字が続けば、今後の開催が厳しくなる」と話す。

 人手不足などで、中止となったイベントもある。

 三重県伊賀市は毎年8月に花火大会を催してきた。15年まで青年会議所が主体となって実行委員会をつとめてきたが、人手不足から15年を最後に開催を断念。昨年は商工会議所が実行委員会を立ち上げ、何とか復活させた。

 しかし、協賛金集めや事務作業の人員を確保できず、今年は中止に。近年は地域活性化の流れの中で様々なイベントが増えていることもあり、担当者は「開催日をずらすなどしているが、厳しい状況」という。

 飲食店、宅配、家事サービス、地域のお祭り、国防や災害出動を担う組織の現場……。人手不足の影響は、ありとあらゆる現場に表れている。厚労省が発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.52倍。職業別にみると、建設、保安、サービスなどの人材確保は特に厳しいとわかる。求人数をみると、介護サービス(21万5千人)、飲食物調理(14万8千人)などが特に多くの人材を必要としている。

 これまでは考えられなかったような、手軽で、自由で、効率的な働き方が可能になってきた。「働きたいけれど、ハードルが高そう」と二の足を踏んでいるシニアや主婦の人たちには、絶好のチャンスが訪れている。(本誌・大崎百紀、吉崎洋夫)

週刊朝日 2017年10月13日号