宮崎県が作製した、マダニの注意喚起のポスター (c)朝日新聞社
宮崎県が作製した、マダニの注意喚起のポスター (c)朝日新聞社

 高く澄み切った秋の青空。ゴルフや、紅葉する山に登ってのキノコ狩りやキャンプ、家庭菜園まで、自然と親しむには、いい季節である。

 しかし油断はならない。山や畑、民家周辺のあぜ道や草むらなどあらゆる場所に生息するマダニを媒介した感染症が日本各地で確認され、死亡例も出ている。

 国立感染症研究所昆虫医科学部の沢辺京子部長によれば、マダニは世界に800種以上、国内には47種が生息するという。

「主に、シカやイノシシ、野ウサギといった野生動物やイヌ、ネコ、ネズミ、人の血を吸って栄養源とするため、病原体の媒介者となり感染症を広げやすいのです」

 野生動物が食べ物を求めて、山から町におりれば、マダニも拡散する。マダニによるウイルス性のダニ媒介脳炎、細菌性の日本紅斑熱などの感染症で死者が出ているが、特に警戒したいのは、致死率が20%とされる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)だ。

 国内では2013年に初めて確認され、現在まで約300人が感染。うち60人ほどが死亡している。発病した動物や人から感染した例もある。昨夏には、西日本在住の50代の女性がSFTSを発症した野良ネコに手をかまれたのち、死亡しているからだ。

「シカなどの野生動物と違い、SFTSに弱いとされるイヌやネコ、人は、発症すると死に至る危険性が高いです」(沢辺部長)

 マダニに刺されないようにすることが最大の予防策なのだが、自然豊かな場所や公園に出かけるときは、長袖の服を着用し、皮膚を露出しないこと。ディートやイカリジンの成分を含む虫よけ剤も有効だ。

 では、刺されてしまった場合はどうすればよいか。

 2~8ミリほどのマダニは、数時間から数日、種類によっては1カ月近くも皮膚にはりついて血を吸うため、大きくなって発見されることが多い。沢辺部長が続ける。
「吸った血液で1~2センチの大きさになる種類もいます。『ほくろやイボが大きくなった』と思って見るとマダニだったということも。無理にはがそうとすると、マダニの牙が皮膚に残り化膿する危険があります。処置は医師に任せてください」

 マダニの活動期は春から秋と言われるが、寒い時期に活動する種類もいる。

病気を運ぶマダニ」は年中無休のようだ。(本誌・松岡かすみ、太田サトル、秦 正理、永井貴子/黒田 朔)

週刊朝日 2017年10月13日号