五輪連覇が期待される羽生(c)朝日新聞社
五輪連覇が期待される羽生(c)朝日新聞社

 来年2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪で連覇を狙う男子フィギュアスケート羽生結弦(22)。そんな彼の五輪シーズン初戦となったオータム・クラシック(カナダ・モントリオール)はジェットコースターのような展開に。ショートプログラムで自身の持つ世界最高得点を更新して最高のスタートを切ったと思われたのもつかの間、翌日のフリーではジャンプのミスが続いて失速(5位)、トータルでは2位に甘んじて、本人が「ぐじゃぐじゃになった」と語ったのだ。連覇に黄信号?

「テレビで見ていた方々には想定外の展開だったと思いますが、我々からすると逆の印象です」と言うのは現地で取材したベテラン記者だ。試合前の練習後、右ヒザを痛めていたので負担を軽減する構成にすると聞かされていた彼らからすれば、「高得点は出ないだろうと思っていたら、ショートは想像以上の完璧な出来で、世界最高得点には驚かされました。だからフリーでの失速はむしろ想定内」という感じで、ミスの多さも「一番最初のジャンプで失敗したから」と重大視はしていない。

「彼は負けたり、失敗したりすると多弁になるんです。それで鼓舞するというか、プレッシャーをかけて、それを乗り越えていく。だから彼の言葉を聞き、スイッチが入ったな、と思いました」(ベテラン記者)

 気になるのは右ヒザの具合。この試合を棄権することも考えたというが……。

「本人は『違和感』と言っていました。言い訳に聞こえるから、ヒザのことは書いてほしくなかったんでしょう。ただ本当に悪かったら出場しなかったはず。それほど悪い状況ではないと思います」(同前)

 ところで、一部には4回転ジャンプを6本取り入れようとする今季の羽生のフリーに対し「リスクを取るのは挑戦者。五輪王者なら落ち着いたプログラムでも勝てる」と、5本の4回転ジャンプの“完成度の高さ”を求めるべきだとの専門家の声もあるが……。

「それで勝てるとは言えない状況です。米国のネイサン・チェン(18)など若手ライバルと比べると、演技点では羽生君が上ですが、技術点を伸ばそうとする若手が4回転を成功させてきていますからね」(スポーツ紙デスク)

 羽生の次戦は10月20日からのロシア杯。初戦の2位でスイッチが入ったという彼の、五輪イヤーの戦いに注目しよう。(本誌・松岡かすみ、太田サトル、秦正理、永井貴子/黒田朔)

週刊朝日 2017年10月13日号