漫画「スラムダンク」の作者・井上雄彦さんとBリーグの選手たちの対談を収録した週刊朝日ムック「B′(ビー・ダッシュ)B.LEAGUE×井上雄彦」が9月上旬の発売以来、「選手たちの本音が伝わってくる」とバスケットボールファンの評判を呼んでいる。すべての対談に同席してきた朝日新聞スポーツ部の担当記者に寄稿してもらった。
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男子プロバスケットボールのBリーグは29日、2季目の開幕を迎える。走り出したばかりのリーグでプレーする選手たちを、少しでも多くの人に知ってもらいたい。井上雄彦さんと選手による対談を朝日新聞で紹介する企画「Bリーグ 主役に迫る」はそんな狙いから始まった。これまで対談した選手は13人。企画を掲載している新聞では書ききれなかった話を紹介したい。
中国出身で、実家が中華料理屋を経営している張本天傑選手(名古屋)は、スラムダンクの主人公・桜木花道と同じような体験をしたことがある。
張本選手は中学入学時ですでに身長が180センチ近くあり、その存在は校内で広く知られていた。ある日、柔道部のごつい先輩たちが教室へ。怖くて、寝たふりをしたのも通用せず、「ちょっと出てこい」と外へ連れ出された。肩を組まれ、「柔道部に入らないか」と詰め寄られる“熱烈”な勧誘を受けた。ここで首を縦に振っていれば、後の日本代表選手は存在していなかっただろう。
米国の高校に通った富樫勇樹選手(千葉)は、日本でも小柄な167センチ。それだけに、現地では良くも悪くも、注目を一身に浴びた。自校で試合があるときは観客席から大きな声援を受けた。一方で、相手の学校で試合をするときには決まってヤジを浴びせられる対象に。「イチローやジャッキー・チェンなど、知っている日本人、アジア人の名前で呼ばれていた」
選手の話を引き出す側の井上さんも、岡田優介選手(京都)との対談では、漫画のアイデアを思いつく瞬間について語った。「お風呂に入っているときや、歩いているときによくひらめく。じーっと机に座っているときは出てこない」。ときにはバスケのシュートを打っているときに浮かんでくることもあるそうだが、「答えを欲しがる邪念があるとダメ。シュートそのものを楽しまなければ」。その話を聞いて以来、原稿で行き詰まると無欲になろうと心がけているが、出来たためしが無い……。
2季目のスタートとともに、対談企画も新聞で再開。新たな選手たちの魅力を、井上さんとともに引き続き伝えていければと思う。(朝日新聞スポーツ部・清水寿之)
※週刊朝日限定オンライン記事