話を戻そう。「のぞき劇場」は「のぞきアトリエ」と名称を変えて再スタートを切った。当然、まねをして「のぞきアトリエ○○」と称する店が現れる。新宿に5軒、池袋と上野にそれぞれ1軒オープンした。まさに雨後の竹の子。商魂のたくましさには感心してしまう。有名だったのが、新宿の花園神社近くで劇場としての許可をとってオープンした「アトリエ・キーホール」だった。キーホールとは英語で「keyhole」。鍵穴という意味だ。鍵とは何だろう。穴とは何だろう。ついつい余計なことを考えてしまう。

 ここには「特別室」があった。電話機が置かれ、壁越しにいる女性と一対一で直接話ができるようにしたのだ。客は女性に対して「ああして」「こんなふうに」と、あれこれポーズの注文をつけ、穴からのぞく。どの業界でも、お客様は神様である。注文に応えないわけにもいかず、女性も大変だったに違いない。

 特別室の電話で大まじめな人生相談をする客もいただろう。「僕は女の子にモテない。なぜ?」「セックスしたいけど相手がいない」と切実な悩みをぶつけたかもしれない。お客様は神様である。相談に応えないわけにもいかず、女性も大変だったに違いない。

 劇場の“人生相談電話”は女性誌でも取り上げられ、話題になった。新風営法が施行された昭和60年、新手の風俗産業として「テレホンクラブ」(テレクラ)が全国に広まったが、のぞき劇場の「人生相談電話」がルーツではないかという説もある。そのテレクラについては次回、お話ししたい。

週刊朝日 2017年10月6日号