日本人としては規格外の体格のせいだろうか。鈴木亮平さんは、こと演劇においては、外国の王や王子の役がよく似合う。昨年は三島由紀夫の「ライ王のテラス」で王を演じた彼が、今年は、フランス近代演劇の金字塔とされる戯曲「トロイ戦争は起こらない」で、トロイの王子・エクトールを演じる。「トロイ戦争~」は、小説や戯曲以外に、フランスの外務省の高官としても活躍したジャン・ジロドゥが、ナチス・ドイツが台頭する中で、戦争に突き進む人間の愚かさをあぶり出し、平和への望みをかけて書いた作品とされている。
「今回は来年の大河ドラマ『西郷(せご)どん』の役作りで鍛えたまま、舞台の稽古に入ったんですが、戯曲に、輝くばかりの肉体を持つ、などと書かれていた『ライ王~』とは違って、エクトールには肉体についての描写がとくになかったので、そこは助かりました(苦笑)」
鈴木さんにとって舞台は、“演技の引き出し”を増やせる場所。舞台のときは、映像で演じるよりもさらに物語全般のことを頭に叩き込まないと、その時代、その場所の空気をまとうことができないからだ。
「とくに主役を演じる場合、台本の読み合わせのときは、自分が演者の中では一番、戯曲のことを知っていたいと思うんです。今回の舞台は、ストーリーが複雑なので、一見難解なイメージを持たれがちですが、台詞は軽妙で、重いテーマの割には、台詞の中に笑いがふんだんにちりばめられています。古典だろうが現代劇だろうが、すぐれた戯曲はいつも、“今上演する意義”を見いだせるもの。そういう意味で、『トロイ戦争〜』はまさに、インパクトの強い演劇になる予感がします」