だが、安倍首相は、米国がもしかすると北朝鮮に武力行使を敢行するのではないか、という不安を抱いているのではないのか。

 たとえば、ニッキー・ヘイリー米国連大使は、「北朝鮮は戦争を求めている。あらゆる外交努力を尽くすが、米国の忍耐にも限界がある」と発言した。マティス国防長官は、「韓国の首都ソウルを重大な危険にさらさずに北朝鮮に軍事力を行使する選択肢がある」と述べている。

 つまり米国は、北朝鮮への武力行使について本気で考え始めているのではないか。そして、米国が武力行使を敢行すれば、韓国や日本にも被害が及ぶ危険性がある。

 トランプ大統領は14日、11月に日本、韓国、そして中国を歴訪するという意向を明らかにした。問題はトランプ−習近平会談である。この会談次第では、米国が武力行使に及ぶ可能性がある。

 だが、武力行使をするとすれば、12月以後になる。逆に言えば、それ以前の武力行使はない。だから、安倍首相としては、それ以前にしかるべき日本の体制を整えておく必要がある。だから早く選挙を実施したいと考えているのではないのか。

 安倍首相は米国から帰国する22日の後に解散の決断をすると表明している。ということは、安倍首相の訪米の目的の一つには、トランプ大統領の本意を確かめたいというのがあったのではないか。

週刊朝日  2017年10月6日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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