著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回、歌手・森山良子さんが紹介するのは「ニコラス」の「ラザニア」だ。
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このお店に通っていた頃はまだデビュー前。成城学園の高校生でした。今から思えば随分ませていましたよね(笑)。
その頃、ザ・ブロードサイド・フォーとして活動していた黒澤久雄さんが成城大学の学生で、彼に誘われてフォークソングを知りました。私の歌に彼らが伴奏をしてくれて、アメリカンフォークを歌っていたんです。ライブが終わったあと、大勢のバンド仲間とタクシーを飛ばして繰り出したのがこのお店。
当時の六本木は流行に敏感な大人や若者が集う街でしたね。イタリア料理なんてまだめずらしかった時代、ここで生まれて初めてラザニアを食べました。
パスタとパスタの間にミートソースが挟まれていて、チーズがとろけて。こんなにおいしい料理が世の中にはあるんだってびっくりしたのを今でも覚えています。コークを飲みながら、仲間と音楽について熱く語り合った、まさに私の青春時代の一ページ。思い起こせば、あの頃の音楽への熱い情熱が今も胸にこみ上げてきます。
「ニコラス」東京都港区麻布台1-4-3 エグゼクティブタワー麻布台2F/営:平日11:30~14:00L.O.、17:00~22:00L.O.、土日祝11:30~21:00L.O./定休日:年末年始のみ
※週刊朝日 2017年9月29日号