荻上:日本の調査でも「親や先生に相談しない」という答えが多かったのですが、一方で、親や先生に相談することで解決につながるケースが約7割という調査結果があります。まず子供が相談しにくい環境が問題なのであって、いじめ対策の授業も「いじめはよくないからやめましょう」ではなくて、「SOSはこういうふうに出しましょう」といった具体的な方法が早急に求められる状況にあります。

ユン:それは韓国も変わらないと思います。

荻上:最後にお聞きしたいのですが、ファーストシーンと通じるあのエンディング。緊張感を保ったまま「その後」を想像させるかたちになっていますね。

ユン:エンディングについてはほんとうに苦労しました。この作品は、先ほどもお話ししましたが、わたし自身の体験が軸になっていて、そこから抜け出し、ちがう未来を見つけたい。つよくそう思うものの、シナリオを書いているときにはどうしても自分の殻に閉じこもってしまう。映画をつくるからには、生々しさとは別に、わたしが信じたいと思うエンディング、小さな子供たちの力でも解決しうる「最高の奇跡」とは何かと考え、いまのかたちにたどり着きました。

 でも、子供たちからは大ブーイングで「何これ!? このあとどうなるの」と質問攻めにあいました(笑)。

荻上:それは大人もそうかもしれない(笑)。でも、映画はなにも規範のようなものを見せるためのものではないですからね。観終わった後、ひとりひとり、あのラストの意味をいろいろ想像しながら持ち帰るのがいいと思いました。

ユン:この映画はいまを生きる子供たちの物語であるとともに、人間社会に常に起きていることを描くよう努めました。日本の多くの人たちに観ていただければ嬉しいです。

(構成・朝山 実)

週刊朝日 2017年9月29日号