9月9日、この日付がまたいいじゃないですか。その日に福井県で開催された日本学生対校選手権、いわゆる日本インカレで東洋大の桐生祥秀(よしひで)君(21)が追い風1.8メートルで9秒98を出しました。

 改めて思ったのが、人間の能力の限界なんて、誰も想像できないってことですね。彼は高校3年で10秒01を出して、鳴り物入りで東洋大に進んだ。でも自己ベストが出ないまま4年生になった。大学生のうちに9秒台が出なきゃ、もうダメなんじゃないかなんて僕も思ったりしたんですけど、あんまりコンディションのよくなかった学生最後の大会で出るなんて。定められた何かがあるのかな、と感じますね。

 8月の世界選手権でリレーを走ったときに左足を痛めて、この大会まで全力疾走をしなかったそうですね。それで250メートルや300メートルと長めの距離を走ってたら、勝手にストライドが伸びて、試合でそれが出たと。ひょんなことがいいトレーニングになったんですね。わかんないもんです。

 コーチやトレーナーといった周りの人たちを信じ、自分はできると信じて頑張ったんでしょうね。大学生活の最後の最後に、努力のご褒美が返ってきた。やっぱりスポーツって面白いですね。桐生君の快挙に、改めてそう思いました。

週刊朝日  2017年9月29日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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