ミッツ・マングローブ「今こそ日本人の勇気を。『やっぱり工藤静香が好き!』」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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ミッツ・マングローブ「今こそ日本人の勇気を。『やっぱり工藤静香が好き!』」

連載「アイドルを性せ!」

1987年は、工藤静香なる『刺激物』が世間に放たれた歴史的な年だ(※写真はイメージ)

1987年は、工藤静香なる『刺激物』が世間に放たれた歴史的な年だ(※写真はイメージ)

 あれから30年。『刺激物』としての威力は弱まるどころか、私たち日本人がつい忘れがちな「日本人なんて所詮は世界の田舎者だぞ!」という、いかんともしがたい現実を定期的に思い知らせてくれる工藤さん。事なかれ主義に蝕まれた平坦な日常の生理や感情に、これほど明快な嵐を起こせる人が他にいるでしょうか?

 ドライでナチュラルな生き方がバブル以降の日本人の理想・目標とされてきた一方で、日本人が永遠に捨てることのできない『ウェットでケバい気質』。工藤静香はその象徴として、日本人の無理した精神バランスを30年間取り続けてきたのです。外資系IT企業で働き、週1でヨガに通い、「夕食はバーニャカウダー!」なんて30代・40代OLが夜な夜なカラオケで工藤静香を絶唱する光景を、私は何万回と見てきました。工藤静香はもはやお洒落に生きていると思い込んでいる日本人の心の故郷なのかもしれません。

 きわめてウェットでヒステリックと思いきや、本能的に出てくるふにゃ~っとした歌声。虚弱そうで、だけど決めた道は最後まで極める。狙った獲物は必ず仕留める。そんなヤンキー感満載な工藤静香を生理的に受けつけない人たちは今も昔もいます。しかしこれこそが、西洋人かぶれには生きられても西洋人には死んでもなれない日本人が大切に誇るべき気質だと思うのです。

 見てください。今の日本で『ドライでナチュラルに颯爽と生きている女』の代表は、今井美樹でもRIKACOでもなく工藤静香に他なりません。みんなも勇気を出して。嫌いになれないは好きってことよ。

週刊朝日 2017年9月22日号


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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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