実は、これまでも北朝鮮の関与が疑われる事件はあった。2014年に金正恩氏の暗殺をテーマにしたコメディー映画「ザ・インタビュー」を製作した米ソニー・ピクチャーズエンタテインメントに対し、北朝鮮がハッカー攻撃を仕掛けたと見られている。

 昨年、バングラデシュ中央銀行の口座がハッキングされ、8100万ドル(約90億円)が盗まれた事件も起きている。

「09年7月にホワイトハウスや米財務省など8機関がサイバー・アタックに遭いましたが、後に北朝鮮の仕業だったことが明らかになりました。13年3月、駐韓米軍のジェームズ・シャーマン司令官(当時)が米下院軍事委員会で『北朝鮮のサイバー攻撃の能力はCIAに匹敵する』と証言したほどです」(辺氏)

 朝鮮人民軍は09年に諜報部門に携わる偵察総局を創設。IT技術向上のための人材育成が着々と進められてきた。

 辺氏によれば、平壌金星第1・第2高等中学校の「コンピューター秀才育成班」に全国から優秀な人材を集めて英才教育を施し、卒業後は金日成総合大学などエリート大学で学ばせるという。

「ほかにも軍の偵察総局傘下の美林大学や、牡丹峰大学でサイバー戦士としての訓練を受けさせます。偵察総局は1局から6局までありますが、6局がサイバーテロを行うハッカー担当部隊なのです」(辺氏)

 現在、サイバー要員は約6800人を擁する。情報戦でも北朝鮮は先進国レベルに達しているのだ。(本誌 亀井洋志)

週刊朝日 2017年9月29日号