「この競技は生半可ではできない。食事、睡眠などすべてをレースのために考えるようになりました」

 ここ数年は毎年ハワイのアイアンマン世界選手権に出場している。おととしはゴール寸前にもうろうとなり、制限時間をわずか5秒オーバーして失格。その映像が世界に配信されると、応援コメントが殺到した。期待に応えなくてはと今まで以上に練習に身を入れ、昨年は見事完走。80歳以上の枠で優勝した。

 練習では、毎回発見がある。自転車の踏み込みをこうすればバランスがよくなる、走るフォームをこう変えれば膝が痛まないなどの改善点を考え、実践する。

「これがめちゃくちゃ楽しい。80歳を過ぎて体力は極端に落ちてきたが、タイムはそこまで落ちていない。技術や工夫で補えることが最近わかってきました」

 食事も大きい。朝食はリンゴ1個、バナナ1本、14種類の野菜入りのコンソメスープ、ライ麦パン。スープは毎朝自分で作る。夕食は目刺しなど骨付きの魚、納豆、キムチ、玄米、具だくさんのみそ汁が定番だ。

 日曜日は夕方からNHKで国際放送のラジオ番組を作る仕事をしている。マラソン大会に出場した後に出勤することもあるそうだ。

「できるわけがない、と思ってやらなければできない。でも、やってみると意外とできるんですよ。できているうちは続けたい」

(ライター・仲宇佐ゆり)
週刊朝日 2017年9月22日号