夫:昼からビールを大ジョッキで6、7杯飲み、夜は友だちとバーで高いウイスキーと安いウイスキーをごちゃ混ぜにして飲んだの。

妻:急性アルコール中毒だったんですけど、70近くにもなって大学生のコンパじゃないんだから恥ずかしくて。お医者さんもバカバカしいって感じで、病院のベッドじゃなく待合室の長椅子に寝かされていました。

夫:駅員にバカにされ、救急隊員にバカにされ、医者に放置され。そこへやっと来てくれた登久子さんは、なぜかうれしそうにニコニコしてたじゃない。

妻:命に別条がなかったから。それに怒るともっと悪化するでしょう。怒られるのが一番嫌いな人だから。

夫:付き合い始めのころも、新宿で酔っ払ってケンカしてボコボコにされて。気がついたら山の上ホテルの前の路上に倒れてたの。

妻:そうそう。私が近くのマンションに住んでいたから、電話がかかってきて迎えに行ったんです。

夫:登久子さんのおかげで命が続いているね。私はね、この人がもし寝たきりになったら、体をツルツルに磨こうと思ってるんです。なぜかと言うと、昔、病気で相部屋に入院したとき、床をピカピカに磨いていたお掃除のおばさんに患者のおじいちゃんたちが、「旦那も毎日磨いてる?」って聞いたんですよ。おばさんは「もちろんよ、ピカピカよ!」って答えて、「へえ、そういう楽しみがあるんだ!」と思ったわけ。

妻:ハハハハ。

夫:だから、もし登久子さんが動けなくなったら、毎日きれいに体をふいてお人形みたいにツルツルにしてあげるからね。私は介護施設の大部屋で、下品なおじいちゃんたちと毎日下ネタを言い合いたい。

妻:あら、いいんじゃない。着物の前をズルズルとはだけていそうね(笑)。

夫:ケアサービスのお姉ちゃんのお尻を触ったりして。

妻:セクハラにならないように、話のわかるお姉さんだといいけどね。

週刊朝日 2017年9月22日号より抜粋