妻:私の両親と同居すると、島尾の両親が寂しい思いをするだろうと思ったので、もともと実家だったこの家の近所に住んで、ときどき茅ケ崎の島尾の両親に子どもの顔を見せに行っていました。

夫:この人、賢くてバランス感覚がいいから、私の両親のことに関してはものすごく助かりましたね。いろいろと。

妻:本当にいろいろありましたからね(笑)。島尾の両親のことは知っていたので、義母から叱られることがあっても、それはそれで仕方ないなと思ってました。

夫:理不尽なことで怒るんだよね。おみおつけの具が少ないとか。

妻:私は江戸っ子の母の料理で育っているので、量より見た目なんですけど、義母はてんこ盛りのほうがいいという価値観でしたから。怒らせてしまうこともありましたけど、こういう人なんだなって、一つひとつ学習していきました。義父は女好きだったので、好みのタイプの女性に対して義母はすごくナーバスだったけど、私は義父の好みじゃなかったから安心していられたというのもあると思います。

夫:母に怒られるときは、いつも必ず私と登久子と娘のまほと家族3人一緒に怒られるんですよ。

妻:「そこに座りなさい」って言われて正座してね。

夫:よく叱られたのは買い物の仕方だね。

妻:大根はこのお店、にんじんはあっちのお店と、こだわりがある人だから、「はい、わかりました」って義母の言うとおりにするんです。でも私は適当だから、いいものがなかったら「ありませんでした」と言うんですけど、義妹のマヤさんは見つかるまで探してたよね。絶対、服従。

夫:大変すぎますよ。一緒にいたら自分を失います。だから本当に、登久子さんには感謝してます。心身ともに健康だから。彼女(母)は子どものころにちゃんとした食事をしていないから体が弱いですし、精神はほとんど病気ですから。ひねくれているし、堪え性がないし、いじわるだし。人の欠点をあげつらうし、あまりいい性格じゃないよね。

「浮気に酒癖の酷さ…それでも夫・島尾伸三と40年に寄り添う理由」につづく

週刊朝日 2017年9月22日号より抜粋