多くのサザン・ロック・バンドに影響を与えたグレッグ・オールマン
多くのサザン・ロック・バンドに影響を与えたグレッグ・オールマン
グレッグ・オールマン『サザン・ブラッド』
グレッグ・オールマン『サザン・ブラッド』

 オールマン・ブラザーズ・バンドのヴォーカリスト兼キーボーディストだったグレッグ・オールマン。肝臓がんの合併症で5月27日に亡くなった。69歳だった。サザン・ロックを世に紹介してきた彼の遺作『サザン・ブラッド』がこのほど発表された。

 かつて刺青を施した際の処置が原因で、2007年にC型肝炎を発症。肝腫瘍も見つかり、肝臓移植の手術を受けた。長く療養を続けながら、11年にブルース・アルバムの『ロウ・カントリー・ブルース』を発表。14年にはレコーディング活動45周年記念のトリビュート公演にも出演したが、昨年10月、自ら主催したフェスへの出演を最後に公演活動も休止していた。

『サザン・ブラッド』は昨年3月、余命いくばくもない状態を自覚し、最後のアルバムになるという覚悟で取り組んだ作品だ。プロデューサーは、先述のトリビュート公演で音楽監督を務めたドン・ウォズ。バックを担ったのはツアー・バンドの面々。近年、グレッグを支えてきたギタリストのスコット・シャラードやホーン奏者ら、いずれも気心の知れた仲間たちだ。

 グレッグの意向に従い、アラバマ州のフェイム・スタジオで収録された。ここではグレッグが兄のデュアン(71年死去)と結成していたアワーグラス時代に録音したことがある。デュアンがセッション・マンとして数々の名演を残したスタジオでもある。

 当初はオリジナル作品主体のアルバムを想定したが、グレッグの体調などを考慮。スコットとの共作による1曲のみを完成させた。アルバムの幕開けを飾る「マイ・オンリー・トゥルー・フレンド」がそれである。

 ダブル・ギターによるイントロをはじめ、その演奏、サウンドはゆったりとしていて雄大。サザン・ロックの神髄を物語る。グレッグの歌声もかつてと違って枯れた味わいがあり、堂々としている。迫る“死”に面したグレッグが“あなたの心の中に私を残して、魂を癒やしてほしい~私の魂を込めた歌に夢中になってほしい”と歌い上げる。

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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