プロゴルファーの丸山茂樹氏が、引退試合を控える宮里藍選手への想い、そして惜しくも優勝を逃した小平智選手のプレースタイルからリアクションの重要性を語った。

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 今シーズン限りでの引退を表明していた宮里藍ちゃん(32)が、9月14日に開幕する「エビアン選手権」(フランス)を最後の試合にすると決めました。

 そしてアメリカでの最後の試合となった「ポートランド・クラシック」(8月31日~9月3日、米オレゴン州ポートランドのコロンビアエッジウォーターCC)は、見事5位に入りました。米LPGAツアーで9勝しましたからね。藍ちゃんの名前を世界に知らしめたアメリカで、しっかり有終の美を飾れてよかったですよね。

 最終日の18番でグリーンへ向かうとき、彼女の生涯成績なんかについて詳細なアナウンスがあったそうですね。アメリカは頑張ってきた人に対するリスペクトがものすごいですからね。時代を盛り上げた人を、ほんとに大事にしますよ。そういう文化があるんです。

 エビアンではもう、ほんとに最後なんだから楽しく、気持ちよくフェアウエーを歩ければいいんじゃないかなと思います。成績なんか気にしないで、楽しくやってほしい。僕はそう思ってますね。

 国内男子ツアーの「フジサンケイクラシック」(8月31日~9月3日、山梨・富士桜CC)には解説のお仕事で行ってきました。最終日、トップに8打差の22位で出た小平智(28)が7バーディー、1ボギーのベストスコア65で回って、H・W・リュー(韓国)、スンス・ハン(米国)とのプレーオフに。

 
 1ホール目で小平とハンがボギー。パーパットを決めたリューの優勝でした。

 今シーズン初優勝を狙った小平は、17番のバーディーチャンスを生かせなかったのが悔やまれますね。あれを決めてれば大逆転優勝でした。プレーオフの1ホール目でボギーを打っちゃうと、やっぱり勝利をプレゼントしてしまう。そこらへんはハンも小平も、「何が何でも」という根性が足りなかった気がします。誰よりも勝ちたいという意欲は、前面に出していかないといけないです。

 リューはプレーオフになる前の18番のパットを、技術うんぬんより、ガッツで入れました。ああいう体から出てくるガッツというのが、瞬間的に湧いて出てくるかどうか。小平が悪いって訳じゃないんですけど、やっぱり淡泊なんですよね。決めどころはリアクションが強い方が、体から闘志が湧く気がするんですよ。だから16番のパットも、入れてガッとガッツポーズするぐらいでよかった。もうちょっとアグレッシブな姿が見たいですね。現状が彼のプレースタイルだから、いいんですけど……。なんだかね、「あれ?うれしかったのかな?」みたいな。お客さんにガッツが伝わるような、相手にも伝わるようなものがプレーの一部にあったら、もっといいんじゃないかなと思うんですよ。

 海外でもアメリカのジョーダン・スピース(24)とかスペインのセルヒオ・ガルシア(37)とかね。「カモーン」っていう雄たけびが、見てて鳥肌立ったり、ワクワクしたりして、「ああプロだなあ」と思うんですよね。最近の日本の選手は静かすぎちゃって。誰よりも勝ちたい気持ちがあるなら、恥ずかしがったりせず、思いっきり体で表現してほしいです。

週刊朝日 2017年9月22日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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