岸恵美子(きし・えみこ)/東邦大学看護学部教授。日本赤十字看護大学大学院博士後期課程修了。保健師や帝京大学教授などを経て、2015年から現職。高齢者虐待、セルフ・ネグレクト、孤立死を主に研究
岸恵美子(きし・えみこ)/東邦大学看護学部教授。日本赤十字看護大学大学院博士後期課程修了。保健師や帝京大学教授などを経て、2015年から現職。高齢者虐待、セルフ・ネグレクト、孤立死を主に研究
セルフ・ネグレスト(自己放任)を巡る自治体の悩み(週刊朝日 2017年9月22日号より)
セルフ・ネグレスト(自己放任)を巡る自治体の悩み(週刊朝日 2017年9月22日号より)

 身の回りのことがどうでもよくなり、放置してしまう「セルフ・ネグレクト」(自己放任)。もし、自分の親の異変に気づいたらどう対処すべきか、東邦大学看護学部教授の岸恵美子氏に聞いた。 

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 セルフ・ネグレクトは誰でもなる可能性があります。高齢者の場合、配偶者に先立たれたのを機に無気力になったり、認知症がきっかけになったりします。

 ゴミを片付けられない。福祉や介護のサービスを拒否する。生活保護を受給せず、病院にも行こうとしない。人と関わらない。セルフ・ネグレクトの人たちは、こういう状態になります。

 一人暮らしだと、民生委員や町内会の見守り対象です。ただ、老夫婦などで同居者がいると外れることもあり、注意が必要です。

 異変をどう見つけ、福祉サービスにつなげるか。遠く離れて暮らす親のことが心配と、娘や息子の立場からの話もよく耳にします。

 配偶者や親しい友人に先立たれた後は、特に注意して見守るとよいでしょう。

 気をつけたいのは言葉遣い。心配のあまり、「汚いから着替えなさいよ」「ゴミだから捨てなさいよ」などと、上から目線の言い方をついしてしまいがちです。

 くれぐれも「臭い」「汚い」「ゴミ」「捨てる」などの言葉は使ってはいけません。プライドを傷つけて意固地になってしまい、かえって逆効果です。

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