この男性のように、身の回りのことの放置には認知症が関係する場合もある。

 記者が3年前に取材した神奈川県内の集合住宅のゴミ屋敷は、認知症の女性(当時72歳)が住んでいた。女性はその後、グループホームに入って穏やかな生活を取り戻したようだ。

 ゴミ屋敷だった当時、女性は見守りを兼ねた3度の配食を受け取ると、テーブル下にそのまま置く癖がついていた。夏場、食事が腐ってゴキブリがわいた。

 こうした女性の“放置”に気づいたのは、週3回通っていたデイサービスのヘルパー。玄関のドアを開けるとゴキブリがはい出ることがひんぱんにあったという。ヘルパーが女性の長女(当時30歳)に連絡し、事態が解決に向け動きだした。

 都市部は隣近所の付き合いが希薄になりがちだ。特に、マンションなどの集合住宅だと、周囲はなかなか異変に気づきにくい。

 行政だけでなく、高齢者のよろず相談窓口の「地域包括支援センター」や、ケアマネジャーやヘルパーなど介護の専門家が中心になって対策をとることもある。

 セルフ・ネグレクトへの転落や、ゴミ屋敷の発生をどう防ぐか。高齢者が示すささいなシグナルに周りが早く気づき、自治体などの支援につなげることが重要になる。

“放置老人”転落を防ぐ、異変察知の7つのチェックリスト
【1】ゴミや食べかすが、家の中に散らかり始めた。
【2】同じ服を着続けたり、入浴や歯磨きが億劫になったりしている。
【3】他者との関わりを拒み、家の中に引きこもりがちになった。
【4】家の中のにおいや、体臭がきつくなっている。
【5】病院受診や介護サービスを勧めても、「必要ない」と言い張る。
【6】金銭管理ができなくなり、家賃や公共料金を滞納している。
【7】失禁に気づかない、使用済みの下着やおむつを隠している。
(取材をもとに編集部作成)

週刊朝日 2017年9月22日号