同社は45歳以上の社員向けの教育・評価プログラムにも、健康の要素を採り入れている。

 プログラムでは、ファイナンシャルプランナーや証券アナリストといった、仕事に役立つ資格取得などの自己研鑽を促している。取り組みに応じてポイントを与え、一定数に達すると55歳以降の給与に反映される。業務に関する自己研鑽に加え、腹八分目・ウォーキングなど健康の項目もある。健康づくりの努力が将来の給与アップにつながる要素の一つというわけだ。

 従業員の健康づくりは新ビジネスにもなっている。

 ベネフィットワン・ヘルスケア社は約7500の会員企業・団体向けに、健診事業や健康ポイント事業を運営している。各社が自前でやると煩雑なポイント管理や商品交換などを、一括して対応するビジネスだ。

 同社によれば、健康ポイント導入は、無関心層への効果が大きいという。

 河原章取締役は「個人が無理なく行える環境づくりが大切です。一人だと続かなくても、グループ単位だと取り組みやすい。交換できる商品が魅力的ならば、モチベーション持続にもつながる。商品選びのイニシアチブは奥さんが握っているとも聞きます」と話す。

 こうした動きが広がるのは、増え続ける医療費を官民挙げて抑える必要があるためだ。団塊の世代が75歳以上となる「2025年問題」も間近に迫る。河原氏は「国を挙げて健康づくりを支援する流れがある。生涯現役社会をつくるためにも、健康の維持が経営課題になった」と指摘する。

 自治体、経済団体、医療団体などでつくる「日本健康会議」は、「健康なまち・職場づくり宣言2020」を定めた。8項目の一つに「予防・健康づくりについて、一般住民を対象としたインセンティブを推進する自治体を800市町村以上とする」とある。すでに300超の市町村が取り組む。企業や自治体の健康ポイント導入の流れは、今後も加速しそうだ。

週刊朝日 2017年9月15日号